薬剤師の供給環境とニーズの変化
日本に薬剤師は約30万人おり、1.3%のペースで増加し続けています。これは高度高齢化に伴い薬剤師自身も現役でいる寿命が延びたことが主たる要因ではないかと見られています。かつては60歳でほとんどの薬剤師が現役を引退していましたが、現在では29歳以下の薬剤師数が約4万人に対して、70歳以上の薬剤師が1万3千人もいます。つまり、70歳を超えても1/3の薬剤師は働き続けているわけです。このように薬剤師の稼働年数が伸びている状態でも薬剤師不足は非常に深刻な状態で求人倍率は高止まりしていますが、その供給環境は大きく変わっており、また高度に発達する医療の中で、さまざまな新薬が登場し、薬剤師に求められるニーズも変化しています。ここでは輩出される薬剤師の供給環境とニースの変化による将来像について解説します。
薬学部が6年制となった影響
薬剤師の供給源である薬学部が現在の6年制の長期教育化への移行は実質的に大学院の修士課程取得に匹敵するものです。この影響は新卒の薬剤師が存在しないという空白を作る結果となりました。それまで少ないながらもなんとか供給されていた薬剤師がゼロとなってしまったわけです。このような社会的混乱を招くことがわかっていながらも厚生労働省が長期教育化に踏み切ったのは「先進国の中で遅れている日本の薬剤師教育を充実させ医療の質の向上をはかる」という.ものでしたが、最近になって明らかになってきたのは、学術分野では確かに欧米諸国に後れをとっているものの、調剤薬局などのサービスは日本の方が遥かに優れているという点です。つまり、厚生労働省が問題にすべきであったのは薬剤師ではなく、学術部門や企業での新薬研究を担う薬学部の質であったということです。日本の調剤薬局の優秀さと確実性については、アメリカやドイツなど医療先進国から数多くの視察が訪れるほどであり、お薬手帳の制度や、錠剤をひとつひとつ目視で数えて指定された数だけを渡す日本の薬剤師のレベルの高さには学ばなければならないとの評価を受けるほどのものですが、それが明らかになったのはつい最近の話です。
この厚生労働省の薬剤師制度の失策は非常に大きく、卒業後の進路として、病院、薬局、MR、一般企業、公務員、大学院、研究者など数多くの選択肢があった進路が、長期教育への移行により、薬剤師養成コースとなってしまったためMRなどを除き臨床系が重視されるようになってしまいました。制度変更について文部科学省からは「医薬品の創製に関わる基礎研究、医薬品開発、医薬品製造等に従事する研究者・技術者、衛生化学や薬事行政従事者等、多様な人材の養成」を目的としている趣旨が述べられていますが、実際は学術偏重型となってしまい、それまで多彩にあった薬剤師の卒業後進路の自由度を低下させる結果となっています。
このように薬剤師の教育期間の延長は明らかに失策であったにも関わらず、元に戻されることは無いでしょう。なぜなら元に戻せば長期在学で足止めを喰らった薬剤師に対して補てんする方法が無いからです。
薬剤師の余剰時代がやってくる
薬剤師の供給は空白があったものの、現在では安定して増加傾向にあります。薬剤師不足といわれながらも実際の薬剤師の需要は23万人と言われており、高度高齢化に伴い需要数は伸びるものの、大きく増えることは無いと見られています。つまり、需要はあまり伸びない中で薬剤師の供給数は一定量で伸び続けているわけです。また上述のように高齢薬剤師が現役を引退しなくなったため全薬剤師数は需要数を上回っているのが現状です。つまりこのままでいけば、薬剤師の数は需要を越えて過剰になるという計算であり、シミュレーションによると2028年の必要薬剤師数は約27万人であるのに対して、稼働薬剤師数は40万人を突破し、13万人の薬剤師が余るとされています。そのような薬剤師余りの時代があと10年後にくるわけです。この問題に対し、厚生労働省は薬剤師需要の将来動向に関する検討会を設置し、施策の検討が行われているようですが、薬剤師の需要と供給予測を公表しただけで、大きな動きは見せていません。
薬剤師の将来像
薬剤師が余剰時代を迎えても薬剤師として生き残って行くためには2つのスキルが必要だと言われています。まず、ひとつ目は増え続ける新薬などの知識と専門性の高いスキルです。今後の薬剤師は医師で専門分化が進んでいるのと同様に専門性の高い知識とスキルが要求されると見られています。もうひとつはコミュニケーション能力です。渡された処方箋に従って黙々と薬をピックアップする薬局での仕事は、ジェネリックをはじめとした多くの選択肢や医師では精査しきれない相性の問題を見抜き、薬局内でのコミュニケーションだけでなく病院とのコミュニケーション、さらには患者とのコミュニケーションをこなせる薬剤師でないとこなしきれないと言われていいます。
まとめ
薬剤師の供給環境は教育期間の延長に伴いで大きく変化しており、一方でそれほど伸びない薬剤師の需要を上回るペースで輩出されています。10年ほどで鮮明となる薬剤師余りの時代に薬剤師として生き残るためには、高度なスキルとコミュニケーション能力を備えるべきでしょう。
<参考>日本薬剤師協会
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